2006年06月02日

嫌われ松子の一生

嫌われ松子の一生
[◆◆◆◆◆◆6/6]
○2006日本/130min/ 東宝
○コメディ/ドラマ/ロマンス/公開2006/05/27
matuko.jpg
○イントロダクション
あるきっかけで教師を辞めることになった川尻松子。父親からの愛の減少感がトラウマとなり、一途で不器用な性格とあいまって、その後は、ヒモと化した売れない文学者の女、不倫・ソープ嬢・殺人者・理容師・ヤクザの女・自殺未遂・引きこもり・・・と波乱な人生を歩む。昭和22年から平成13年までの53年の生涯を、中島哲也監督(下妻物語)が、昭和のTVトピック映像とユニークな映像感覚で描く。
○感想
理屈じゃなく、中島哲也ワードルにいやおう無く引き込まれる作品です。主人公の松子役、中谷美紀や、彼女の親友沢村めぐみ役、黒澤あすか、お笑いタレント、ガレッジセールのゴリの好演技もさることながら、・・・松子の波乱に飛んだ人生を、ポップな世界と絶妙に融合させているところは、まさしく お見事 というしかないと思います。

歌あり、踊りありの、とにかく楽しくて、悲しくて涙が流れる作品。俳優陣も実力派・個性派、またお笑いタレントの特徴を上手く使っていて、あれだけ個性派ぞろいでありながら、バラバラな感じになってないのもいい。
周囲の人からは”不幸”に見える松子の人生、辛い時期は、ミュージカル風に仕立てたり、辛らつな会話はコメディタッチでまとめたり、ある部分はディズニー映画のようなおとぎ話的CGの世界であったり、観る側の喜怒哀楽のバランスを絶妙にコントロールしているところが、憎らしいほどうまい。
中島監督、劇映画の世界では、下妻物語でメジャーになったので、もともとCM制作がメインだったのはよく知られてますが、たとえば山崎努と豊川悦司のCM「サッポロ黒ラベル」や、山口美江の「しば漬け食べたい(ふじっこ)」、木村拓哉のミュージカル風「JRA」CMなどなど、ああ、あれかという有名なCMを制作してきた人で、そういった映像がふんだんに盛り込まれているような気がします。
川尻松子の物語はフィクションですけど、
松子のような人生。客観的にというか、常識的に捉えると”不幸”に思えますが、・・・精一杯生きている松子本人は、この映画のファンタジックな世界観のように、意外と楽しむところは大いに楽しんだりして、悪くなかったのかもしれません。
父の愛情が、病弱な妹へより多くそそがれ、自分への愛情不足を感じてた松子のトラウマが、その後の人生を大きく左右します。つまり”不幸”の発端になっているのですが、…松子だけじゃなく、世の中の人、みんなが何かのトラウマを持って生きてるはずで、そこをクローズアップしたかったわけではないような気がします。
であれば、中島監督のこの世界観、重たいテーマを軽くみせるだけのもではなくて、実は、主人公松子の心の中の世界観と大いに合致しているのかもしれません。

観るなら、是非、劇場の大画面の暗空間で楽しんでほしい作品です。




監督: 中島哲也
原作: 山田宗樹『嫌われ松子の一生』
脚本: 中島哲也
撮影: 阿藤正一
美術: 桑島十和子
編集: 小池義幸
振付: 香瑠鼓
音楽: ガブリエル・ロベルト 渋谷毅
出演:
中谷美紀(川尻松子)瑛太 Eita(川尻笙) 伊勢谷友介(龍洋一) 香川照之(川尻紀夫) 市川実日子(川尻久美)黒沢あすか(沢村めぐみ) 柄本明(川尻恒浩)木村カエラ(超人気シンガー)ゴリ 大倉修二(ガレッジセール)
posted by J.T. at 01:58| 東京 🌁| Comment(9) | TrackBack(20) | 鑑賞した映画2006 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こうして紹介されると、なかなか興味深い作品に思えますが、「嫌われ」という字を見るだけで(「いじめ」と同じように)、映画館に近づくのもいやになります。インパクトのあるものをと選んだのでしょうが、今のTVもそうですが、もう少しタイトルに神経を使ってほしいですね、特に邦画!美感、詩情がなさすぎです。そうお思いになりません?
Posted by Bianca at 2006年06月02日 12:28
Bianca さん。

こんにちはー
そうですね。確かに「嫌われ」という字はネガティブな響きとイメージが付きまとうと思います。
もともと文字から受けるイメージは、時代とともに変化してゆくものですが、ことさらネガティブな言葉は、時間の進行に伴って、社会的な暗い部分、つまり人間の影の部分をどんどん吸収し、まるでブラックホールの様に成長し、言葉自体が大きな力さえ持つようになります。
いわゆる言霊(ことだま)とでも言うのでしょうか、そのものの本質を覆い隠し、人間の気持ちを、その言葉の持つイメージや思いの中に縛り付けてしますよね。そうそう、陰陽師の安倍晴明風に言えば、言葉が「呪(しゅ)」となり、心を呪縛し、その行動をも左右する力まで持つという具合でしょうか。

Biancaさんのおっしゃるとおり「いじめ」という言葉も、その言葉を発したり、聞いたり、みたりするだけで、現代人はその言葉のもつ暗たんたるイメージに縛られてしまいます。「嫌われ」の文字にも、そういったネガティブなエネルギーが含まれています。

ただ、この映画を観ていると松子は決して「嫌われ」ではなく、不器用で一途な女性なのが良く分かります。原作者が意図したかどうかは分かりませんが、彼女をよく知らないひとが、その風貌や行動から形容した「嫌われ」という言葉でくくられた松子と言う女性。その女性の生涯を、中島哲也監督は彼独特の映像感覚で、その言葉の呪縛から解き放ってくれたような気もするんです。

「嫌われ」と言う文字で呪縛された映画を観る側の心を、映画の中で呪縛から解き放ち、松子の生涯はどう?まんざら捨てたものでもないでしょ?って言うような感じでしょうか。文字のもつ呪縛から解き放たれたとき、その本質が、暗闇に差す光のように見え出すことがありますよね。

「微笑みに出逢う街角」でデボラ・カーラ・アンガーが演じる キャサリンの父親が、不良少年達に蹴り殺されそうになるシーンがあります。最初、少年達は、その父親を殴るのに躊躇するのですがリーダー格の少年が、”ホームレスだから殴ってもいいんだ!”と言った途端にほかの少年達の思考回路が停止し、憑かれたように殴り始めます。これなども「ホームレス」という言葉に呪縛されたいい例だと思います。

Biancaさんが思われたように、一部の邦画や洋画の邦題に対する心地の悪さ、私も感じることが多々あります。前回エントリーした「僕を葬る(おくる)」に”おくる”とあてた違和感は、映画を観たあとも胸の辺りでつかえた感じがしてますからね。
Posted by J.T. at 2006年06月03日 08:02
こんにちわ。「下妻物語」は面白いと聞いていたので是非見たかった作品です。中島哲也の2作目のこの作品も見てみたい。ちなみに「下妻物語」は英タイトルは「Kamikaze Girls」です。なんで?って感じですが、見てないのでこのタイトルの意味が分かりません・・・
Posted by claudiacardinare at 2006年06月07日 23:28
J.T.さま
女性と男性で、「嫌われ」と言う語に対する感覚は少し違うかも知れません。私の世代の女性にとっては、それは「死」を意味する位の言葉だったはずです。嫌われても平気と居直って生きていけるようになってからでも、その言葉自体は元通りの強烈な作用をもつのです。
ジャン・ジュネが「泥棒日記」でやったような「芸術による貶められたものの復権」ということは分るのですが。
Posted by Bianca at 2006年06月08日 08:44
しつこくお邪魔します。どちらも苦手な映画ということで「ぼくをおくる」と共に昨日見たのですが、客数が多いわりに層が薄いように感じました。TVのCMに幼い時から馴染んだ世代には感覚的にぴったり来るものがあるのでしょうか。ただ所所日本社会への風刺が効いていて感心しました。
英題の Memories of Matsuko がいい。松子はむしろ「聖女」では。出版に際して、よく売れるように、あえて内容とずれた名前をつけたのでしょうか?私の中では5点中3.3点位です。
Posted by Bianca at 2006年06月09日 10:34
claudiacardinareさん。
レス遅くなりました。
「Kamikaze Girls」ですか〜
面白い名前をつけますねー
アメリカやイギリスでkamikazeがどんなイメージなのか良く分かりませんが・・・映画の内容とはちょっとイメージが違うかもしれませんね。
中島哲也監督の作品を気に入ってるのは、どんな題材でも”旬”の味付けをしてるからなんです。キャストも映像表現の感覚もそんな気がします。この映画が、後10年20年経ってどんな評価を下されてるのが楽しみでもあるですよ(笑)
Posted by J.T. at 2006年06月11日 19:10
Biancaさん。
レス遅くなりました。
言葉のもつ意味って確かに世代によって、そして男性か女性かによって大分違うんだと思います。私が嫌われという言葉の中にユニークさが内包されているとイメージするのは、そういった違いなのかも知れません。

ところで、映画もごらんになったんですね。
…なるほど、そうなんです。私もCMをひとつの作品としてみるようなところがあります。商品のPR効果よりも映像や発想の面白さに目がいってしまい、本末転倒なところもありますが(笑)
この中島監督の作品もコマーシャルフィルムを観るような感覚で観ていたと思います。映画の表現と時代の”旬”の感覚とは切り離せないと思いますが、”ユニークな旬さ”を買いました。

「Memories of Matsuko」 は美しい表現ですね。松子と一緒に暮らした男達が松子の歌を口ずさんでいたシーンを思い出しました。彼らにとってはまさしく「聖女」だったのかもしれません。
Posted by J.T. at 2006年06月11日 19:44
(^-^*)/コンチャ!
TB有難うございました♪
>であれば、中島監督のこの世界観、重たいテーマを軽くみせるだけのもではなくて、実は、主人公松子の心の中の世界観と大いに合致しているのかもしれません。

おお〜 大人の見解だ!(笑)
ところで JTさん、ちょい出のお笑い芸人や歌手の事 わかりましたぁ?m(*- -*)mス・スイマセーン
Posted by とんちゃん at 2006年08月06日 12:27
とんちゃん さん。
はいはい、ちょい出のお笑い芸人や歌手の方わかりますよ〜
劇団ひとり、ゴリはなかなかの演技してましたよね。
女囚で出てきたAIのアルバムも聞いてますし、土屋アンナ、木村カエラも知ってますよ(笑)

結構お笑い好きなほうで、さっきまで、”笑金”の替え歌大賞を見てました(笑)ますだおかだの、増田の替歌うまかったなぁ〜なんて、見てないと意味わからないですよね(汗)
Posted by J.T. at 2006年08月06日 22:17
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック

嫌われ松子の一生・・・・・映画館
Excerpt: 最近邦画ばかり見ているなあ〜。これは先週見たんですけどね。今日は『花よりもなお』見て来たし、これから見たいと思うものも『デスノート』や『TORCK2』等、邦画が多いんですよね〜〜。この『嫌われ松子の一..
Weblog: ぷち てんてん
Tracked: 2006-06-03 22:14

『嫌われ松子の一生』
Excerpt: 松子。人生を100%生きた女。 ■監督・脚本 中島哲也■原作 山田宗樹(「嫌われ松子の一生」幻冬舎文庫)■キャスト 中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、木村カエラ、..
Weblog: 京の昼寝〜♪
Tracked: 2006-06-03 23:50

嫌われ松子の一生
Excerpt: 色彩豊かに歌い上げる人間への愛に満ちたドラマ!
Weblog: Akira's VOICE
Tracked: 2006-06-04 10:47

【劇場鑑賞55】嫌われ松子の一生(MEMORIES OF MATSUKO)
Excerpt: 『私、川尻松子。大きくなったら素敵な王子様と結婚するんだぁ♪』 だけど、現実は・・・ 教師をクビ 家出 同棲相手の暴力 不倫相手に捨てられ ソープ嬢になり ヒモを..
Weblog: ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!
Tracked: 2006-06-04 23:52

嫌われ松子の一生
Excerpt: ある日、荒川の河川敷で女性の他殺体が発見されます。川尻松子(中谷美紀)、53歳。今まで彼女の存在を知らずにいた甥の笙(瑛太)は、松子の弟である父親(香川照之)に頼まれ、松子の住んでいた部屋の後片付けを..
Weblog: 日っ歩??美味しいもの、映画、子育て...の日々??
Tracked: 2006-06-06 23:55

『嫌われ松子の一生』
Excerpt: 監督:中島哲也  CAST:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介他 平成13年、東京に暮らす川尻笙(瑛太)は、父親に叔母の川尻松子(中谷美紀)が住んでいたアパートを片付けるよう頼まれる。松子は荒..
Weblog: *Sweet Days*  ~movie,music etc...~
Tracked: 2006-06-10 00:11

嫌われ松子の一生見てきました。
Excerpt:  正直最初は見なくても良いかなと思っていたのですが、他の方のブログを読むとかなり評判がよいので嫌われ松子の一生見てきました。
Weblog: よしなしごと
Tracked: 2006-06-16 04:26

嫌われ松子の一生/山田宗樹
Excerpt: やるせない思いで最終頁を閉じました。些細なことに何度も自分を見失い、流され、それでも死より生きることを選んできた松子。その人生の終わりがこれではあまりに辛すぎます。 体の弱い妹に父の愛情を奪われ..
Weblog: 文学な?ブログ
Tracked: 2006-06-17 00:52

嫌われ松子の一生
Excerpt: 映画、嫌われ松子の一生の一生を見てきました。ネタバレです。最初に松子が死んでいるところから話が始まるのですが本人は、いないのにどうやってこの先話を進めていくのだろうと思っていたらうまい具合に話が繋がっ..
Weblog: ブログ:映画ネット☆ログシアター
Tracked: 2006-06-19 09:34

「嫌われ松子の一生」中谷美紀は代表作を手に入れた
Excerpt: 「嫌われ松子の一生」★★★★オススメ 中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介主演 中島哲也監督、2006年 リアルを排除し、劇画タッチで夢のような作品。 悪趣味に近い表現が随所に散りばめられて、 ..
Weblog: soramove
Tracked: 2006-06-23 21:38

嫌われ松子の一生 06年134本目
Excerpt: 嫌われ松子の一生 中谷美紀 ≒ 濱田マリ ≒ 柴咲コウ ≒ あたし > 山田花子 2006年  中島哲也 監督  山田宗樹 原作中谷美紀 、瑛太 、伊勢谷友..
Weblog: 猫姫じゃ
Tracked: 2006-07-07 12:35

嫌われ松子の一生
Excerpt:  前評判は高かったものの、大ホームラン『下妻物語』の後だけに、そうたやすく傑作をたてつづけに発表できるものかと疑問視していました。  しかし
Weblog: シネクリシェ
Tracked: 2006-07-16 12:10

Memories Of Matsuko
Excerpt: 『嫌われ松子の一生』 “嫌われ松子”と聞くと、最初は誰しも性格ブスな女性をイメージするのではないでしょうか?しかし川尻松子(中谷美紀)は決して人から嫌われていた訳ではなく、本当はむしろ愛されていた気..
Weblog: Tokyo Bay Side
Tracked: 2006-07-18 21:51

映画「嫌われ松子の一生」を観た!
Excerpt: 中島哲也監督は「松子に会いたいから映画にする」と言ってくれた、主演の中谷美紀さんは「松子を演じるために女優を続けてきたのかも知れない」と言ってくれたと、原作者の山田宗樹は、コメントしています。それにし..
Weblog: とんとん・にっき
Tracked: 2006-07-29 09:34

嫌われ松子の一生
Excerpt: 「嫌われ松子の一生」 2006年 日本 ★★★★★ もう、最高ヘ(≧▽≦ヘ) きゃーーん♪ この映画は、市内のシネコンでも、郊外に行かなきゃ観れなかったのが(そこに行ってまで..
Weblog: とんとん亭
Tracked: 2006-08-06 12:17

映画「嫌われ松子の一生」
Excerpt: 昭和22年福岡で生まれ、男に恵まれず堕ちて53年の生涯を荒川の河川敷で閉じた一人の女性。山田宗樹の小説"嫌われ松子の一生"の映画化。 川尻松子(中谷美紀)、物語は..
Weblog: 茸茶の想い ∞ ??祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり??
Tracked: 2006-08-24 02:48

◆試写会・嫌われ松子の一生
Excerpt: 雨が降る中、御堂会館に 嫌われ松子の一生の試写会に行って来ました。 監督は、あの前にも笑わせてもらった 下妻物語の中島哲也監督 そりゃぁ〜笑わせてくれるっしょ 【STORY】..
Weblog: 映画大好き☆
Tracked: 2006-10-20 19:56

嫌われ松子の一生−(映画:2006年140本目)−
Excerpt: 監督:中島哲也 出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子、黒沢あすか、柄本明、木村カエラ、柴崎コウ、片平なぎさ、ゴリ、竹山隆範、谷原章介、宮藤官九郎、劇..
Weblog: デコ親父はいつも減量中
Tracked: 2006-11-18 14:42

嫌われ松子の一生
Excerpt: 製作年度 2006年 製作国 日本 上映時間 130分 監督 中島哲也 原作 山田宗樹 脚本 中島哲也 音楽 ガブリエル・ロベルト 、渋谷毅 出演 中谷美紀 、瑛..
Weblog: タクシードライバー耕作のDVD映画日誌
Tracked: 2006-11-19 20:52

嫌われ松子の一生
Excerpt: 誰に聞いても絶賛のこの作品。 2006年が終わる前にDVDでやっと観ました。 ふぅ。 平成13年の夏、。荒川の河川敷に何者かに撲殺された女性の死体。 その姿は醜く肥え太り、身なりはホームレ..
Weblog: 映画、言いたい放題!
Tracked: 2006-12-29 17:13
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。